有性生殖だから遺伝的多様性が大きいというわけではない:It is not that genetic diversity increases by sexual reproduction

良い記事です

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ウイルスは、RNAまたはDNAと、それを包むタンパク質の殻(カプシド)から成る。その大きさは、数十nm~数百nmとされる。n(ナノ)は10−9倍である。ウイルスは細胞膜をもたず、ATPやタンパク質合成もできない。ウイルスは単独では自己複製できず、宿主生物に寄生したときだけ増殖できる。ウイルスは自己複製の際に遺伝子が変異するだけでなく、異なる株のウイルス間で、断片化された遺伝子を組換えて(viral sex)、両方の性質をもった子孫ウイルスが生まれることがあるとされる(文献参照)。

ウイルスセックス

アーキア(古細菌)の大きさは、0.5µm~数µmで、最大のものは10数µmである。µ(マイクロ)は、10−6倍である。ほとんどは球菌または桿菌であるが、アメーバのような種や、複数の細胞が集合する種も存在する。アーキアは、同種の個体間で接合し、壊れたDNAを修復したり、遺伝子を交換して組換えることがある。

バクテリア(真正細菌)は、古細菌とほぼ同じ大きさで、0.5µm~5µmである。最大では、750µmに達する種が知られている。一般には無性生殖で増殖するが、生存条件が厳しくなったとき、接合(有性生殖)して遺伝子を交換する。

真核生物で最小といわれるプラシノ藻は、アーケプラスチダ、緑藻植物門の単細胞生物で、大きさは1µm~数µmしかない。葉緑体は1個しかないが、光合成によって水とCO2から糖を生産できる。おもに、無性生殖で増殖するが、接合して有性生殖する種も報告されている。

プラシノ

ゾウリムシは、アルベオラータ、繊毛虫門の単細胞生物で、長さ90µm~150µm、幅40µmほどの大きさである。細胞表面の繊毛で運動し、細菌や酵母などを捕食する。無性生殖のときは、2つに分裂する。有性生殖では接合して遺伝子を交換するが、細胞そのものは融合しない。

ゾウリムシ

酵母は、真核生物で、菌界子嚢菌門の単細胞生物である。糖を分解してアルコールとCO2を生じる(アルコール発酵)。「酵母」とは、生物学上の分類ではなく、多くの異なる種が含まれる。大きさは直径 3〜4µmであるが、40µmまで成長するものもある。

代表的な酵母に、サッカロミケスがある。サッカロミケスは、醸造、パン発酵などに広く用いられ、人間にとってきわめて重要な種である。カビなどと同じ子嚢菌門であるが、菌糸はない。栄養分が豊富にあると、2時間ごとに出芽して分裂・増殖するが、これを出芽酵母と呼ぶ。出芽酵母は、母細胞が成長して大きくなると、細胞に出芽が生じて娘細胞となり、娘細胞は成長して大きくなる。両者が同じ大きさ(もとの2倍)になったときに、2つに分裂する。これは、無性生殖であり、自己複製してクローン分裂する。

出芽酵母

サッカロミケスには、aとαの2つの性が存在する。これらは染色体数が1本しかない1倍体(n)である。aとαは、栄養分が枯渇すると、フェロモンによって相手を区別し、接合する(有性生殖)。このとき、フェロモンをより多く出している異性を選ぶ。異性と接合すると、細胞が融合して、2倍体(2n)の分裂酵母になる。2倍体の分裂酵母は、栄養条件が良いときは、出芽して増殖するが、栄養条件が悪くなると遺伝子の組換えと減数分裂が起きる。4つに分裂して、それぞれ1倍体の細胞になる(図)。

酵母サイクル

分裂酵母では、aとαがそれぞれ成長して2倍の大きさになったとき、aとαは接合して減数分裂し、4つの子供細胞ができる。これは、大きさ(蓄積資源量)でみれば、2つの細胞の大きさが2倍になったとき、4個(2倍)になるので、出芽酵母(無性生殖)と同じ比率である。

分裂酵母

酵母は、生育条件が良好な環境では無性生殖で増殖し、条件が悪くなると異性と接合して生き延びようとする。つまり、生存条件が良いときは、無性生殖が有利で、生存条件が悪いときは、有性生殖のほうが有利ということを示している。

また、有性生殖の本質は、「同種の個体間の遺伝子の交換と組換え」であると考えると、ウイルスを含むすべての生物で、遺伝子の交換と組換えが起きる。

減数分裂

有性生殖の減数分裂では、まず生殖細胞でDNA複製が行われ、元の染色体と同じ配列の2本の染色体が生成される(姉妹染色分体)。次に、姉妹染色分体同士が対合して2価染色体を形成し、組換えが行われる。その後、それぞれの相同染色体が分離して、減数第1分裂が終了する。つづいて、減数第2分裂が始まり、2の姉妹染色分体が別れ、配列の異なる4つの配偶子ができる。

このような有性生殖の遺伝子の交換と組換えは、一般には、遺伝子の多様性を大きくする仕組みと考えられている。しかし、遺伝子の変異が起きるのは、複製によってDNAが合成されるときである。また、変異というのは、「不完全な自己複製」のことであり、中立説では、突然変異は偶然に、中立に起きる。

遺伝子の交換と組換え時にも、何らかの「不完全さ」が生じる可能性はあるが、組換え時にはDNA合成が行われるわけではないので、1次的な機能をもった遺伝子が新たに生成する可能性は小さい(後述)。すなわち、複製の不完全さ(変異率)そのものは、無性生殖も有性生殖も同じと考えられる。

遺伝子の多様性というのは、種の遺伝子プール内の個体間の遺伝子の差異のことである。遺伝子プール内で生じる時間当たりの変異の数が、無性生殖も有性生殖も同じならば、時間当たりに生じる遺伝子の多様性は、無性生殖も有性生殖も同じであるはずだ。

一般に、生物が有性生殖を行うのは、遺伝子の多様性を増すためと解釈される。しかし、遺伝子プール内で生じる時間当たりの遺伝子の差異は、無性生殖も有性生殖もほぼ同じと考えられ、遺伝子の多様性という理由では、コストが高い有性生殖の有利性を説明できない。(つづく)

文献
Umene K. Mechanism and application of genetic recombination in herpesviruses. Reviews in Medical Virology. 1999
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10479778?dopt=Abstract
Ascospore Formation in the Yeast Saccharomyces cerevisiae
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1306807/
減数分裂時に起こる遺伝的組換え機構
https://www.nig.ac.jp/museum/genetic/07_b.html

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